流星

 

とうさんは約束の時間を過ぎても姿を現さず、真理が誘拐され、草加君が死んだ。
とうさんは本当は私たちに会う気なんてなかったんだろうか。
「そんなはずない。里奈にも真理にも会いたいって言ってた。あの時のとうさんは昔と変わらなかったよ」
思わず口に出した問いに、はっきりした答えが返ってくる。
横を歩いている彼の落ち着いた表情を確かめて、うん、と頷いた。
実際にとうさんに会った三原君がそう感じたのなら、とうさんはきっと来るつもりだった。 それなのに来なかったということは、とうさんの身に何か起きたのかもしれない。
繋いだ手がふいに強く握られる。口に出さなかったけれど三原君も同じことを心配しているのだろう。
その手を握り返した。

例えばベルトを拒否して、追ってくるオルフェノクからどこまでも逃げ続けるという選択もあったのかもしれない。
私にはそんな選択は考えられなかったけれど、三原君はあの時そうしようとしていた。
逃げても追われ続けるだけで帰るところなんてない。そう言ったのは私で、今もそう思っている。
デルタになることで三原君は私以上に危険な場所に身を置くことになり、草加君が死んでしまった今危険は いっそう大きくなるだろう。

私が引きずり込んだ。
ごめんね。
もうすっかり覚悟のできている人に、今さら口に出して謝ったりはできない。
私もずっと一緒にいるから。1人で闘わせたりなんてしないから。
また涙が落ちそうになって慌てて顔を上げる。





草加が死んだ。
そのことを真理には告げないと言い出したのは乾で、そうするのがいいと思ったから同意した。
それなら里奈にも言わないという選択もあったんだ、ということに今更気づく。
そんなこと思いつきもしなかった。
草加のこともとうさんのことも、1人で受け止める自信なんてなかった。 里奈の声が聞きたくて、里奈に会いたくて、駆けて来る里奈を見つけて、里奈を抱きしめて、温かい涙に触れて、 やっと少しほっとした。
なんとか今歩いていられるのは手を繋いでいるからだ。

一生懸命生きれば今ここにいる場所が自分の家になるから。
以前里奈が言った言葉が、今はよくわかる。
子どもの頃からいつも隣にいてくれて、一緒に泣いてくれて、一緒に考えてくれて、笑顔で引っ張ってくれる。
里奈が今も隣にいてくれることを、何に感謝すればいいんだろう。


「頑張ろうね」
さっきまで泣いていたせいなのか里奈の声は少しくぐもって聞こえた。
「ああ、頑張ろうな」
いつもより小さく見える体を引き寄せた。
真理を悲しませたくなくて、真理に何も言わずに独りで耐えようとする乾巧は強い男だと思う。
でも真理もいつかは事実を知るときがくるだろう。 その時は、俺たちがいる。1人じゃない。真理にも乾にもそう知らせたい。

「星がきれい」
言われて空を見上げれば、遠い彼方に星が幾つか瞬いている。
「ほんとだ」
幼い頃に流星塾のみんなと見上げた満天の星空とは比べものにならないけれど、それでもこの場所から見えるわずかな星は 光って見えた。
まるで取り残された俺たちみたいだ、なんて思った。





 

 


今頃になってなんだ?って話ですが(汗)。
結局、巧も黙っていられなくて、すぐに真理に言っちゃうんですよね。

 

 

ヒーロー小説目次へ

HOMEへ