側にいるのに……

 

荷物運びの仕事をこなして汗だくになったのでシャワーを浴びて、さっぱりして部屋に戻った。
さっきまで修理品に向かっていたシオンは、いつの間にか納品に出かけたらしい。とても静かだ。
ユウリが1人でソファで新聞を読んでいる。やけに身体が前に傾いている。
あれ?
もしかして居眠りしてる?
ユウリが居眠りだなんて珍しいな。
最近忙しかったから疲れてるのかもなあ。

起こさないように、そっと斜め前のソファに座る。
ユウリって髪が長いんだよな。
新聞の上に髪が覆いかぶさっているので、眠っているらしいユウリの顔は見えない。
髪を短かくしてくれてたら寝顔が見れたのになあ。
なんてね。
髪が短くて顔がはっきり見えてたら、きっと恥ずかしくなっちゃって、こんなふうに見てはいられない。
髪に隠れてるから、安心してついマジマジと眺めてしまう。
毎日顔を合わせているけど、こんなふうにじっと見つめたことはなかったな。

こうやって見ると、ごく普通の女の子しか見えない。
俺の知っているユウリは、見た目のまんま、しっかりしてて頭がよくて頼りになって頑張り屋で、 ちょっとドジで照れ屋で可愛らしくて優しくて、 そして、こんなに華奢で小柄で、綺麗な髪の女の子だ。

だけどそれだけじゃないんだよな。
小さい頃にお父さんとお母さんと妹を目の前で殺されるという辛い経験をして、 捜査官になって、ドルネロを追いかけて1000年も前のこの時代に来て、タイムピンクとして闘ってるんだ。

それがどんなことなのか、俺にはよくわかってないのかもしれない。
そりゃ俺だってロンダーズを逮捕しなければならないとは思ってる。そのために頑張ってる。
でもユウリはおそらく俺よりずっと真剣にずっと切実に、ロンダーズの逮捕を望んでいるだろう。
どれぐらい真剣でどんなふうに切実なのか、俺は想像するしかない。 想像するしかないから想像はするけど、実感はできない。

ユウリのことをちゃんとわかっていない気がしてもどかしい。
こんなに側にいるのに。
もっとユウリの気持ちをわかりたいのに。
もっともっと力になりたいのに。

どうすればもっとわかることができる?
どうすればもっと力になれる?





外の階段をトントンと駆け上がる音がする。誰か帰って来た。あの足音はきっとアヤセだ。
ドアが開くのと同時に俺は立ち上がった。
「おかえり!」
「あ?ああ、ただいま」
あまりにも素早く出迎えたせいかアヤセは驚いたような顔をした。

俺の後ろで新聞がガサガサと動く音がして
「おかえりなさい」
ユウリの声がする。






 

 


私の書く竜也って、なんかいつもこんな感じになっちゃいますね。

 

 

KISSしたくなる20のお題へ

小説へ

小説感想用掲示板へ