8.HAPPY BIRTHDAY

 

「あのクレープうまかったよな」
ドモンはアヤセが作ったクレープをすごく気に入ったらしくずっとその話をしていた。
「はい!ホントおいしかったです。 また作ってくださいね、アヤセさん」
「別にあんなのいつでも作れるけど」
「ていうかどうしてみんな私には言わないの…」
元々はユウリのパンケーキ用のタネだったのだから、普通は自分に頼むだろうと ユウリは思っていた。
「そういえばさ〜、クレープ食べて思い出したんだけどさ!」
ユウリの機嫌が悪くなっていく気配をいち早く感じ取った竜也は、すぐさま話題を変えた。
「おれ子供のとき学校近くで売ってるクレープがすごく食べたかったんだけど、 親には食べたらダメだって言われてさ…
でもみんながすごいおいしそうに食べてたからどうしても食べたくて。 だからおじいちやんに誕生日はケーキじゃなくてクレープがいいって言ったんだよね。 そしたらおじいちゃん誕生日のとき店ごと連れてきてさ! ビックリしたけど、でもたらふくクレープ食べて納得したの思い出した」
「いかにもオマエらしい話だな。 オレなんて誕生日ケーキもなかったのに」
「どうして?」
「オレんち兄弟多いから一番上の俺はケーキ買ってもらえなかったんだよ」
「でもそれってオレにとったらうらや…」
「あ〜!!」
竜也の話の途中でドモンが叫んだので、突然の大声に全員腰が抜けるほど驚いた。
「突然大声出すなよ、ただでさえうるさいのに…」
「思い出した!オレ、今日誕生日だ!」
「そうなんですか?!」
「ああ、すっかり忘れてた!でも1000年前だし誕生日って言っていいのかどうかわかんね〜けど」
ドモンの言葉にユウリとアヤセも少し考え込んだ。
「確かにそうね」
「バカにしては考えてるな」
「はあ?!オマエどうしてそう一言多いんだよ!」
「とにかく今日はドモンの誕生日なんだ!」
アヤセとドモンのやりあいを止めるために、竜也は一回り大きな声で叫んだ。
「じゃあお祝いしましょうよ! いいですよね、ユウリさん」
TRで何か行事をするためには、まず金庫番のユウリに伺いを立てるのが全員の癖になっていた。
「まあ、誕生日だしね」
「じゃあ決まり!オレとアヤセは買い物当番だからこれから買い出し行ってくる。ユウリとシオンは準備よろしく。 で、ドモンはそれまで…」
やっぱり主役が準備するのもなあと竜也たちが思っていると
「ビラ配っといて」
ユウリの一言が全員の動きを止めた。
「さすがにそれはちょっとかわいそうだろ?」
竜也たちもそこまでは冷酷にはなれなかったが、
「だって、居たら邪魔じゃない」
ユウリの説明に妙に納得してしまった。
「ちょっと待てよ!俺の誕生日祝ってくれるのに、何で働かなきゃいけないんだよ! オレが主役なんだろ?!」
ドモンはビラ配りを逃れるために必死でユウリに訴えたが、
「働かないならパーティーしないわよ」
結局逆らえなかった。


それから、竜也とアヤセは買出しに行き、ユウリとシオンはTRに戻って片付け&飾りつけ、そしてドモンは一人 淋しくビラ配りへ出かけて行った。
ユウリたちの準備が一段楽したころ、ちょうど竜也たちが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま〜」
二人は両手いっぱいに食材を抱えて帰ってきた。
「あれだけのお金でよくそんなに買えたわね…」
ユウリは竜也たちが買い出しに行く前に金額の上限を決めたのだが、見る限りどう考えても軽くその金額を超えてそうだった。
「実はちょっとしかけがあるんだよね〜」
竜也はアヤセの方を見てうれしそうに笑った。
「何がですか?」
「実は、ケーキを買うお金で食材を多めに買ったんだよね」
「え?!ケーキ買ってこなかったの?」
ユウリとしては、ドモンにあやかって久々に食べられるケーキを楽しみにしていたため、かなりのショックだった。
「実はさ…ほら!」
竜也は持っていた荷物のひとつの中身をテーブルの上に広げた。
「これ、生クリームに缶詰…?」
「そう、ケーキみんなで作ろうと思って!」
なるほどと思ったが、
「今から作るんじゃすごく時間かかるじゃない!」
さすがにユウリもドモンに長時間一人でビラ配りさせるつもりではなく、時間稼ぎ程度に考えていただけだった。
「いや、すぐできる」
アヤセが自分の持っていた荷物の中からスポンジーケーキを取り出した。
「これが半額だったからな」
竜也たちが買い物に行ったスーパーで、ちょうど賞味期限寸前のスポンジケーキが半額で売られていた。
なら、それを買って自分たちでバースデーケーキを作った方が安上がりだと考えたアヤセと竜也は、生クリームと 缶詰のフルーツを買ってきたのだ。
その浮いたお金で、大食いのドモンを満足させる量の食材を買った。
「というわけで、オレとアヤセはご飯作るから、ユウリとシオンでケーキ作って」
「分かりました!楽しそうですね」
シオンの頭の中はもうケーキをどうやって飾りつけるかでいっぱいだったようだ。
「ちゃんとおいしそうにしてね。それと、ユウリ」
「何?」
「あんまり雑にしないでね」
アヤセとシオンがハッとした瞬間ユウリの叫び声がTR中に響き渡っていた。
「それどういう意味よ?!!」


「オマエはいつもユウリに対して一言多いんだよ」
台所で調理に取り掛かっていたアヤセはため息混じりに竜也に言った。
「だって、せっかく作るんだからなるべくきれいなのがいいじゃん。 ユウリ手先不器用っぽいし」
「だからって本人に言うなよ…」
竜也とユウリの仲がイマイチ進展しないのは、その一言多いのが原因だと思ったが、 あえて口には出さなかった。


「やっぱりクリームは多い方がいいですよね〜」
シオンはうれしそうに生クリームをしぼりながら、鮮やかなドレープを作っていった。
それに対してユウリは、
「…どうしてかしら」
どうやったらそうなるのか分からないようなドレープばかりがスポンジケーキの上に出来上がっていた。
「大丈夫ですよ、ユウリさんのスポンジを土台にしちゃいましょう!」
シオンはユウリが作ったドレープをつぶし、一面にクリームを塗っていった。
ユウリの唖然とした表情気づかず、鼻歌交じりにシオンは一人順調にケーキを飾りつけていった。
その様子を見ながら、ユウリは二度とケーキは作らないと心に誓った。


竜也たちの料理も完成し、シオンたちの(というかほぼシオンのみの)ケーキも完成したとき、ちょうどドモンが帰ってきた。
「全部ちゃんと配ってきたぞ!」
空腹と一人余計に働かされたことによる怒りで、ドモンは勢いよく叫びながらドアを開けた。
「…!」
その瞬間目に飛び込んできたのは、テーブルいっぱいの料理と「HAPPY BIRTHDAY!」という大きな文字だった。
「すげえな…」
一人感動に打ちひしがれていると、
「おめでとうドモン!!」
という掛け声とともにクラッカーを鳴らしながら4人が部屋の隅から飛び出してきた。
「すごいだろ?!料理は俺とアヤセが作ったんだ」
うれしそうに話しかける竜也の声がまるで聞こえていないかのように、ドモンは立ち尽くしていた。
「ドモン?」
4人は不思議そうな顔をしてドモンを見つめていた。
「おれ、こんな盛大に誕生日祝ってもらうの初めてだ…」
やっとのことでドモンが口にした言葉を聞いて竜也たちはうれしそうに笑いあった。
「それだけじゃないんだぞ」
「え?」
ドモンが竜也の方を見ると、シオンが台所へ行き、ケーキを持ってきた。
「これ…」
「僕とユウリさんで作ったんですよ!ね、ユウリさん♪」
シオンの満足げな言葉に対してユウリは、まあ一応ねと言葉を濁していた。
「みんな、ホントにありがと!!」
ドモンのうれしそうな顔を見て、
「じゃあ早速始めますか!」
竜也がみんなにグラスを配った。
「改めて、誕生日おめでとうドモン!」
全員の声が重なり、グラスの当たる音がTRに響いた。
「よし、たらふく食うぞ〜!」
「オマエが一番喜んでるのは腹いっぱい食えることだろ」
「当たり前だろ、今度いつこんなごちそう食えるか分からないんだから! ケーキだって俺一人で全部食ってやる!」
ドモンの最後の一言にユウリとシオンが即座に、
「それはダメ〜!」
叫んでいた。


(樹里より)
シオンも少しはユウリにも作らせてあげてよ〜。ユウリももうケーキは作らないなんて言わないでまた挑戦してね。
久々の食事部屋のお話はマネージャーさんからいただきました! これぞトゥモローリサーチです。みんな生き生きしています。特にユウリ、微妙に心が揺れ動いているのですよね。
やっぱりタイムレンジャーはいいなあ。マネージャーさん、ありがとうございました!  


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